韓国の昨年の合計特殊出生率が0.98にとどまり、初めて1.0を下回ったことが、韓国統計庁が2月27日に発表した出生統計の暫定値から明らかになり、話題となっています。
一つの国が一定の人口規模を保ち続けるのに求められる出生率は2.1。韓国はその半分にも達しておらず、出生率が世界で一番低い国となったわけです。経済協力開発機構(OECD)加盟36か国の平均値は1.68で、日本は1.43。日本より出生率が低い国としては、韓国の他には台湾、シンガポールがあげられます。従来から、日本は出生率が低く、自殺率が高い国として知られてきましたが、韓国は出生率は更に低く、自殺率は更に高い国となっているわけです。韓国の専門家の間では、激しい競争社会、非正規職の増加や住宅費の高騰に伴う晩婚化・非婚化に加え、学歴競争による教育費の負担、女性の働きにくさ等がその原因にあげられています。
鷺沼教会信徒で、富士通総研元会長の伊東千秋さんが最近のブログ「千秋日記」の中で『82年生まれ、キム・ジョン』という本を紹介しておられます。現代の韓国が抱える悩みを理解するうえで、大変参考になると推薦しておられます。早速私も購入して読んでみましたが、実に興味深く、韓国社会の病巣をえぐった問題作であると同時に、日本人としても他人ごとではないという感想を持ちました。
OECD加盟先進国の中でも際立った女性蔑視の国として名高い韓国。伊東さんのブログを引用すれば、“米国LPGAの上位を韓国人女性が独占するようになったのも、彼女たちが、女性には未来がない韓国から脱出するための手段としてゴルフを選んだからだと言われている”そうです。
上記本の著者チョ・ナムジョ女史は、韓国におけるベストセラー作家で、この本は百万部を超える韓国では異例の売り上げを示し、映画化が決定しているとか。台湾でもベストセラーとなり、英国、ベトナム、イタリア、スペイン、フランスなど16ヵ国で翻訳出版の予定だそうです。「女性たちの絶望が詰まったこの本は、未来に向かうための希望の書」と評されるこの本と伊東さんのブログを読むことで複雑な日韓関係を読みとく光が与えられるかもしれません。
主任司祭 松尾 貢