来月、10月の著名な聖人の中に、1日の小さきテレジア、4日のアシジのフランシスコ、現代の二人の聖人教皇(11日のヨハネ23世、22日のヨハネ・パウロ2世)がいます。この4名の聖人には関連映画が製作されているという共通点があります。小さきテレジアを描いた『テレーズ』は1987年のセザール賞6部門を受賞した名作で、厨房で野菜を切ったり、魚に包丁をいれるときの音と映像が印象的です。アシジのフランシスコを描いた1962年の『剣と十字架』、更に1973年フランコ・ゼッフェリーニ監督の『ブラザー・サン シスター・ムーン』。2002年にテレビ映画として制作された『聖ヨハネ23世 平和の教皇』は、200分の大作で第2ヴァチカン公会議を理解するための恰好の教材です。ヨハネ・パウロ2世にはポーランドとイタリア合作の3時間に亘る超大作『カロル―教皇になった男』があります。ベルリンの壁崩壊に至る背景を理解するためにも有益な映画として知られています。

最近、『銀幕の中のキリスト教』という本が刊行されました。「ベンハー」から、「沈黙―サイレンス」まで49本の映画のキリスト教的背景が解説されています。付録の特別対談・映画評論家の服部功一郎氏と青木保憲牧師の興味深いやり取りを少しご紹介しましょう。

服部:ハリウッド映画のストーリーの型に、主人公が一度どん底に落ちて、もうダメだというところから大逆転していくパターンがありますよね。このパターンは日本人も知らず知らずのうちに身につけて、多くの映画やドラマで模倣されています。実はこれが、とてもキリスト教的なんです。

青木:元ネタになっているのは、キリストの受難と復活ですね。

服部:かつてクリントン大統領が“不適切な関係”で議会やマスコミから責められたとき、彼は最後にそれを認めて謝罪したじゃないですか。するとアメリカ人は、大統領の罪をゆるしてしまうんですよ。<罪をゆるせ>という聖書の教えが、こうした場面で発動する。日本だったら認めた途端に、それまで以上に叩かれるでしょうにねぇ……。だから日本人は失敗を認めずに誤魔化すんです。あるいは「遺憾に思います」とか「世間をお騒がせしましたことをお詫びします」など、よくわからない謝罪をする。

年間300を超える映画を観るという晴佐久師版『銀幕の中のキリスト教』が刊行されたら、きっと興味深いことでしょう。

主任司祭 松尾 貢

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