アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

四旬節によく歌われる典礼聖歌383番は作曲家・高田三郎さんの傑作の一つと言われています。

“渇く 渇く 渇く、あなたはあなたを飲み、私は私を飲み、なお癒えぬ 渇き 耐えがたく渇く今 おお、飲もう、飲もうイエス イエス キリストを飲もう……”。

言葉もメロディーも神秘的です。

いくら自分の満足を求めても本当の満足は得られない、渇きを癒せない。だから、イエスを飲みましょう、イエスを求めましょう、という意味の聖歌です。あのアウグスティヌスが『告白』の中で、「あなたは私たちを、ご自身に向けてお造りになりました。ですから私たちの心は、あなたのうちに憩うまで、安らぎを得ることができないのです」と宣言したことに通じるものがあります。

マザー・テレサがよく言っていた〈CLING TO JESUS〉(イエスにすがりつきましょう)という言葉も同様な意味です。

四旬節は、私たちが恵みにおいて成長する時です。もっと強く、自分が持っている恵み、イエス様との繋がりを自覚すべき時です。

パウロは洗礼を受けて間もないエフェソの信徒への手紙のなかで次のように言っています。「まさに神は、私たちが神のみ前で聖なるもの、非の打ちどころのないものとなるように、世界創設以前から、キリストに結ばせることによって私たちを選び出して下さいました。それは私たちへの愛によるものです」(エフェソ1章4節)

神様は私たちを愛して下さった。しかし、その自然的な状態からご自分の子とするために、やはり清めが必要でした。罪深い人間には神様の特別な恵みが必要でしたから、御ひとり子を地球に人間として送って下さった。パウロが言う「永遠の昔からある神様の秘められた計画」です。

「Amazing Grace」はそのことを歌っている素晴らしい聖歌です。

Amazing grace! How sweet the sound. That saved a wretch like me! I once was lost but now I’m found; was blind, but now I see.

〈wretch〉という言葉の意味は罪人以上の悪い意味だそうです。あの〈ヤツ〉です。とにかく神様は私たちがwretchであるにもかかわらず愛してくださっている。それは驚くべき恵みなのだ。だから感謝し、その恵みに応えたい。それが四旬節の原点にあることを思い出しましょう。

主任司祭 松尾 貢


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