下井草教会で働いていたとき、近所にある八成小学校というところから毎年9月に10人くらいの2年生の子供たちが数名の保護者に付き添われて、教会を訪れ、聖堂を案内して、最後に子供たちの質問を受ける機会がありました。
これはこの小学校の『私たちの町の宝』という企画で、教会だけでなく、神社仏閣など何ヵ所かグループに分かれて訪問するといったものです。事前に学校の先生がお願いに来ましたが、下井草教会を町の宝と見てくれていたのにはとてもありがたく思いました。

この子供たちの訪問の際に毎年様々な質問がありましたが、面白い質問の一つにひとりの男の子が十字架のキリスト像を指さして、「あのおじさん誰?」と聞かれたときには正直、面食らいました。この男の子は純粋に誰であるか知らなかったのでしょう。また木の上にかけられていて不思議に思ったのでしょう。それでキリストに対して“あのおじさん”と言ったんだと思います。
私は何と答えようかと少し迷いましたが、子供が一人の人間のおじさんと思っていたので、難しいことは言わずに、私も一人の人間のキリストとして説明しました。
「この人は何も悪いことはしていないのに鞭で打たれたり、足で蹴られたりしていじめられ、殺されてしまったんだ」と言うと「どうして?」と聞かれたので、「みんなの身代わりになってくれたんだよ」と答えました。するとその男の子は「それじゃいい人なんだね」と言ってくれました。

救い主としてのキリストは上手く伝わらなかったと思いますが、この子供たちが将来、教会を訪れたことを思い出して、キリストに興味を持ってもらえればそれで十分かと思いました。

帰るときに「また遊びに来てね」と私がみんなに言ったとき、その男の子が一番に「はい、また来ます」と大きな声で喜んで言ってくれたことは、何よりも実りであったように思います。

主任司祭 西本裕二

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