協力司祭 榎本 飛里
統計数理研究所という機関があり、5年おきに日本人の国民性に関する調査を実施しています。個人的に興味深いのは宗教に関する調査で、以下のような質問が用意されています。例えば、①宗教についてお聞きしたいのですが、たとえば、あなたは、何か信仰とか信心とかを持っていますか? ②それでは、いままでの宗教には関わりなく、「宗教的な心」というものを、大切だと思いますか、それとも大切だとは思いませんか? ③あなたは「あの世」というものを、信じていますか?……などです。
結果はと言えば、①に関しては宗教を信じると回答した人の割合が1958年の35%から2018年の26%へと着実に減少しています。②への回答は1983年の80%から2018年の57%へと減少。③の場合には1958年の20%から2018年の41%へと倍増しています。(註:③の項目では1963年~2003年のデータが取られていません。)
データを「しる」ことで、初めて見えてくる事柄があります。同時に、知ることで満足していては決して見えてこない事柄、「思い巡らす(ルカ2・19参照)」ことでしか見えてこない事柄もあります。この両者、「正確な情報を得ること」と「それを基に考えを巡らせること」の双方が揃わなければ、人が真実に辿り着くことは極めて困難になります。ところで、みなさんは上記のデータを知った今、何をどのように思い巡らし、それをどのように行動に結びつけるのでしょうか?
この60年の間「あの世を信じる」という人びとが増加する一方で、宗教を信じている人びとが減少、宗教心を大切だと思う人びとも減少している現状があります。これは日本のクリスチャンが真面目に宣教や証しをして来なかった結果でしょうか? 否! この問題は日本の宗教界全体の課題であり、クリスチャン人口の少なさから考えれば「日本のクリスチャンはそれなりに善戦している」と評価する人もいることでしょう。
しかし、私たちの宝である子供たちが「信仰を持たないのが当たり前・宗教心は大切ではない」という環境の中に生きているという事実は重く受け止めましょう。人が日常生活において触れる様々な情報は、必ずその人の考え方に影響を与えます。反キリスト教的な情報が溢れ返っている現状において、これらの情報から子供たちを守るのは大人の役割です。予防教育として「正しい情報の見分け方」と「考え方」の両者を子供の時分から伝えて行かなければなりません。
「しる」ことには責任が伴います。それは自ら考えること、そして行動に移すこと。
覚悟はできているでしょうか?
(教会報「コムニオ」2023年1・2月合併号より)