アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

​池江璃花子選手が使った聖書の言葉

2月12日に自分が白血病であることを公表した競泳女子日本代表の池江璃花子選手。翌13日、ツイッターとインスタグラムに投稿した文章の中で「私は、神様は乗り越えられない試練は与えない。自分に乗り越えられない壁はないと思っています」と綴った。池江選手は白血病公表後、多くの人からメッセージをもらったことに感謝を示し、「私にとって競泳人生は大切なものです。ですが今は、完治を目指し、焦らず、周りの方がたに支えていただきながら戦っていきたいと思います」と治療に専念すると述べています。

TBSの人気ドラマ「JIN~仁」でも「神は乗り越えられる試練しか与えない」というセリフがよく出て来るようですし、スケートの羽生結弦選手も「よく言われる『試練は乗り越えられる者にしか与えられない』という感覚は、自分の中にあります」と語っています。

池江選手や羽生選手の言葉は、新約聖書コリントの信徒への手紙Ⅰ 10章13節に基づくものです。

「神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることをなさらず、試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えてくださいます」

ここで言われている<試練>という言葉は、日本語では“逆境”や“苦難”といったニュアンスで捉えられる場合が多いのですが、原語のギリシャ語「ペイラスモス」は試みや誘惑とも訳せる言葉であり、続く14節が「私の愛する人たち、こういうわけですから、偶像崇拝を避けなさい」とあるので、偶像崇拝やみだらなこと、神を試みること、不平を言うこととの闘いという信仰上の試練と捉えたほうがよいのかもしれません。

キリスト者が全人口の1%といわれる日本ですが、他にも聖書に由来する言葉で定着しているものが数多くあります。「目からうろこ」や「豚に真珠」「砂上の楼閣」「狭き門」などがその代表例です。

羽生選手や池江選手が、聖書の一節として意識して語ったかどうかは定かではありませんが、聖書の言葉は、日本人の思考や日常に想像以上に浸透しているのかもしれません。

主任司祭  松尾 貢

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