ある奥様が大手術を控えていました。彼女は怖くてたまりませんでした。主治医は優秀な医者で、彼女もそのことはよくわかっていました。多くの友人が彼女のために祈り、支えてくれていることも彼女はよく知っていました。しかし、それでも彼女は怖かったのです。友人たちは教会の司祭に話し、彼女の見舞いに来てくれるように頼みました。

司祭は病者の塗油の秘跡とお祈りをしましたが、彼女の強い怯えは収まりませんでした。そこで、その司祭は一つの勧めを与えました。「詩編23番をゆっくり、何度も読んでごらんなさい」。

彼女は言われたとおりにしました。何度も何度もこの詩編を祈りました。少しずつ、彼女の恐れは、おさまり始めました。

手術の後、彼女は司祭に言いました。「『主は我が牧者』(詩編23)を何度繰り返して読んだかわかりません。たぶん何百回でしょう。本当に神様が私と共にいてくださることが感じられました。私は神の病んだ子羊の一匹であり、神は私をしっかりと両手で抱いていてくださっている、それを感じさせてくれました。恐れは消えていました」と。

詩編23はイスラエルの民を導いた牧者としての主に向かって、感謝と信頼を歌った詩編です。短いので、全文引用してみましょう。

主はわたしの牧者。わたしには乏しいことがない。
主はわたしを緑の牧場に憩わせ、わたしを静かな水辺に伴い、
魂を生き返らせ、み名にふさわしく正しい道に導かれる。

わたしは死の影の谷を歩む時でさえ、災いを恐れない、
あなたがともにおられるから。
あなたの杖、あなたの牧杖こそ、わたしを安心させる。
あなたは敵の見ている前で、わたしのために食事を調え、
わたしの頭に香油を注がれた。わたしの杯は溢れた。

恵みと慈しみは生涯わたしに伴う。
わたしは主の家にとこしえに住む。

主任司祭 松尾 貢

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