『日本に生きるドン・タシナリ』(東書選書)の著者でジャーナリスト阿部徹雄氏の随筆の中に次のようなくだりがある。
「娘が生まれたとき、信者でもないのに思い切って“まりあ”という名前をつけた。区役所に届けに行った際、若い女性係員が“あべまりあ”と囁き、“美しい名前ですね”と微笑んでくれたのが嬉しかった」。やがて阿部徹雄氏は受洗のお恵みをいただくことになり、アヴェマリアの祈りを日常的に唱えるようになっていく。
今春、サレジオ学院幼稚園の年少すみれ組にも2人のまりあちゃんが入園してきた。さっそく覚えた天使祝詞のお祈り「アヴェマリア」をどんな気持ちで唱えていくことでしょう。

復活祭翌日から37名という大勢の巡礼団でスペイン・ポルトガルをまわって来た。いずれの巡礼地にもマリア像があった。
バルセロナのサグラダファミリア(聖家族)教会には外尾悦郎さんをはじめとする幾人もの彫刻家のマリア像。モンセラートのベネディクト会修道院には16世紀にイグナチオ・ロヨラが騎士のシンボルである剣を置いて生き方を変えた「黒い聖母像」の祭壇の前で、40数名の修道士の晩課の祈りに与り、ミサを立てることができた。ロヨラが霊操を編み出したマンレサの洞窟聖堂のマリア。トレドのエル・グレコの聖母画とマリアブランカ。アヴィラでのカルメル山の聖母、ファティマでは3人の子供たちにご出現なさった聖母。最後に、ザビエルや天正少年使節を見守ったリスボンのベレンの塔の聖母像などなど。足かけ12日間の巡礼は、聖母と共に歩んだ旅だったといえる。

その巡礼の中でよく歌ったのがスペインのJuan Espinosa作曲の「サンタマリア」だった。アヴィラの教会でこの歌を歌っていたとき、地元の方たちもスペイン語で一緒に歌ってくれた。ガイドの女性に尋ねると自分たちは小さい頃から知っている歌よ、ということだった。

ただ一人歩む 日々の小路 サンタマリアあなたと共に歩む
共に歩んで下さい サンタマリアよ(繰り返す)

5月は聖母月。このひと月の私たちの歩みが聖母と共に歩むひと月でありますように。

主任司祭 松尾 貢
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