アイキャッチ用 小坂神父の今週の糧

世界が無神論と唯物論に巻き込まれていた1858年2月11日、聖母マリアは喘息持ちの虚弱児だった少女ベルナデッタに現れ、人々の精神的肉体的癒しと赦しをもたらして下さいました。以来、ルルドのマッサビエルの洞窟は世界的一大巡礼地となり、多くの人が一度は訪れて恵みに浴したいと願う地となりました。

私も巡礼団に参加させてもらって多くの恵みをじかに感じ取ることができた経験を持っています。広い洞窟前の空間は完全な沈黙と祈りの場であって、そこでは聖母マリアを通じて神に近い存在になったのだと誰しも感じ取ることの出来るところです。その広場で祈っていた時、病院の方からストレッチャーに横たわった病人たちを、看護の方が押しながら広場に入って来ました。病人の方々が思い思いの場に進めてもらい、そこで祈りのひとときを過ごし始めました。一人のストレッチャーに臥している老婦人が、車を押しているボランティアの看護師の方に言葉をかけるのが見えました。そうするとその人は微笑みながら車を適当に操って、洞窟のよく見えるところに止めてあげました。ご婦人はそこで暫し祈りのときを過ごそうとされたのですが、ふと見るとその若い娘さんは広場の石畳にそのまま跪いて、ともに祈り始めました。ルルドの洞窟の前でストレッチャーに臥せて祈る老婦人と傍らで石畳に跪く白衣の若い娘さんの姿は、美しい絵となって忘れ得ない印象を与えてくれました。

2月11日が「世界病者の日」と定められて、今年は14回目になります。教皇様はこの日のためのメッセージにおいて「わたしは、人道的かつ福音に根ざした理念と原則に基づいて連帯の精神を高め、人々がわたしたちの兄弟姉妹の世話を忍耐強く行なうように、さまざまな分野において働きかけているかたがたに対して、心から感謝したいと思います。」と述べられ、続けて「病気の重荷を負った、親愛なる兄弟姉妹の皆さん、皆さんの苦しみを、キリストとともに御父に捧げましょう。従順をもって受け入れたあらゆる試練は尊いものであり、全人類の上に神の恵みをもたらすものであることを信じてください。」と励ましてくださっています。

「病の苦しみは、人間の罪に対する神の罰を避けさせる避雷針である」と聞いたことがあります。わたしたちはわざわざ色々の苦業を探し求める必要はありません。日々の生活で身近なところに示され、与えられることを、神様に捧げるのが一番大切なことなのです。

主任司祭 小坂正一郎

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