月に一度、火曜日午後、溝の口のある施設を3人で訪れてます。そこには、赤羽星美ホーム出身者で、看護士生活5年目にして全盲となった女性信徒の方がおられます。世話をする身内がいらっしゃらない彼女のために、ご聖体とテープ(鷺沼教会ボランティアの方が主日の聖書朗読を吹き込んでくださっている)を持参し、お祈りと語らいの時間を過ごします。歴代の主任司祭がずっと継続してきた月一度の恒例訪問です。全盲の彼女が鷺沼教会の共同体のために何十年も捧げてくださっている犠牲と祈りは、鷺沼教会の大きな支えとなっていると感じています。
彼女とお祈りするときの「天使祝詞」は、彼女が星美ホーム時代に覚えた「めでたし」です。このなつかしい文語体の“めでたし聖寵満ちみてるマリア”のお祈りをしていると、半世紀前にタイムスリップした感覚になっていきます。この「めでたし」は90年代になって、「恵みあふれる聖マリア」という口語体訳に代わりました。この口語訳は、翻訳上少し問題がある(例えば、<女の中で祝せられ>という部分が欠落している)ということで、改訂が決められました。そして、昨秋「アヴェ・マリア」の試行訳文に変わり、この6月14日の司教総会で、決定版「アヴェ・マリア」の祈りが発表されたというわけです。
「めでたし」世代の人間にとっては、日常使う「天使祝詞」が、頭の中に4つあって、一人で唱えていると、頭が混乱しまいがちです。ですから、「変更はもう勘弁して!」というのが本音ですが、今度の決定版登場で、当分改訂はないでしょうから、ボチボチ慣れて、覚えていくようにしたいものです。
ところで、キリシタン時代の日本人はどんな「天使祝詞」を唱えていたのでしょうか。天草キリシタン版『どちりな・きりしたん』によると、下記のとおりです。
「ガラサみちみち玉ふマリヤに御れいをなし奉る。御あるじは御みとともにまします。女人の中にをひてわきて御果報いみじきなり。又御胎内の御みにてましますゼス・キリシトはたつとくまします。デウスの御母サンタ・マリヤ、いまもわれらがさいごにも、われらあくにんのためにたのみたまへ。アメン」。
高山右近や細川ガラシアが唱えていたこの祈りを、新しい「アヴェ・マリア」と比べながら、味わってみませんか。