日本26聖人の祝日にあたって

アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

2月5日といえば思い出すことがある。昔は、長崎西坂の26聖人殉教地はただの野原で、いくぶんこんもりしたところに十字架と記念碑がたっているだけだった。

小学校5年生の2月5日、水浦君という1年上の先輩から行列に行こうと誘われた。夕方6時までに帰宅という門限に厳しい家庭だったので、母親の許可を得ていないのが引っかかったが、「いいことをするわけだから」と自分で自分を納得させて、先輩と中町教会に向った。そこから松明をともし、ロザリオを唱えながら西坂殉教地の広場まで行列をし、聖体降福式で記念行事が終了した。すっかり暗くなった帰路、門限をかなりオーバーしているので、こっぴどく叱られるかもしれないという心配が襲ってきた。おそるおそる玄関のドアを開けて中に入ると、祖父が「貢は26聖人の行列に来とったね~」と両親に説明してくれた。そのときの祖父の嬉しそうな表情が忘れられない。

1962年の26聖人列聖百周年を記念して、カトリックの彫刻家・舟越保武氏の26聖人記念像、さらにガウディを日本に紹介した建築家として知られる今井兼次氏の26聖人記念館、聖フィリッポ教会が建てられ、西坂は巡礼地として整備されていった。26聖人像の前にたたずむと、5年の歳月をかけて刻んだという一人ひとり表情が実に豊かだ。26名の中に少年が3人(14歳のトマス小崎、13歳のアントニオ、12歳のルドビコ茨木)含まれているが、舟越さんは少年たちの顔を刻みながら、自分の息子の顔とだぶって、涙が止まらなかったという。
「除幕式を終えて天草へ行き、そのまま東京へ帰る予定だったが、どうしても、もう一度像を見たくなって、また長崎へ戻った。そのときは雨が降っていて、彫刻は雨にぬれていた。3人の少年の顔に流れる雨滴が私の心に焼きついて離れない。これ程に去り難いものとは思わなかった」。(『巨岩と花びら』より)

山野尊行さんのご尽力で、昭和6年製作の映画『日本26聖人 われ世に勝てり』(ホイベルス師脚色、監督:池田富保)のDVDをお借りすることができました。今後、何回か鑑賞会を行ないます。みなさん、ぜひ、ご覧になってください。

主任司祭 松尾 貢

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