福者ヨハネ23世教皇が公会議を招集した重要な目的の一つは、教会一致促進運動(エキュメニズム)でした。900年近い東方教会との分裂、四百年来のプロテスタントとの分裂は、教会の大きな傷であり、しばしばいろいろな紛争の原因になってきました。
同じキリストを信じ、同じ洗礼を受け、同じ聖書を読んでいる仲間であるキリスト信者同士が、しかも兄弟愛を第一の掟と信じているもの同士が、争い、分裂していることは矛盾でしかありません。しかし、この矛盾を強く感じたのは、ヨーロッパにいたキリスト者たちよりも、宣教でアジアやアフリカに赴いた宣教師、宣教女でした。アジア、アフリカの人たちはカトリックとプロテスタントをじっくり比較して教会を選んだわけではなく、たまたま出会った宣教師や選んだ学校、近くにあった教会がカトリックかプロテスタントだったかによって、その教会に属することになったというのがほとんどであった訳です。それだけに、「どうして同じキリストを信じながら、分裂しており、またお互い仲が悪いのですか?」という問いは、宣教師たちにとっては急所を突かれた鋭い質問でありました。以上のような意識の高まりと、ヨハネ23世のグローバルな視点がエキュメニズム運動を高めていったと言って過言ではないと思います。
教皇ヨハネ23世は40代、50代という人生で一番油ののりきった時代をブルガリアとギリシア・トルコというカトリックがごく少数の国の教皇大使として過ごしました。ブルガリア正教、ギリシア正教、イスラム教の国、カトリックがマイナーな地で、外交官としては出世コースから外れた地味な永い時を過ごしたことが、離れた兄弟や他宗教に対する目、カトリックを外側から見る目を養う契機となったわけです。
「人生万事塞翁が馬」というように、将来何が役に立つかわかりません。
キリスト様が「みなが一つになるように」と祈られたように、私たちも一致のために祈り、努力を重ねることは、キリストの弟子たちの大切な課題であると思います。1月25日まで続く「キリスト教一致祈祷週間」にあたって、特にその意向で祈りたいものです。