「最近のカトリック新聞は面白くなってきましたね」という声を耳にする。カトリック新聞社に格別やり手の編集長が就任したとか、編集方針が変わったというわけではない。新教皇様の姿勢やスタンスが斬新で、ヴァチカンに健やかで力強い風が吹いているのが、その理由だ。

教皇が最初の公式司牧訪問地(ヴァチカン市国関係以外)に選ばれたのは地中海に浮かぶランペドゥーサ島だった。この島はアフリカからの不法移民問題でイタリアのみならず、EU各国で頭痛の種となっている場所だ。7月上旬、船で上陸した教皇は早速、移民たちとお会いになり、彼らとミサを捧げられた。ミサの中での教皇説教の一部をご紹介したい。

『「海で死亡の移民たち、希望への道だったその船は、死への道だった」新聞の見出しにはそう書かれていました。この数週間、残念ながら同様なニュースが何度も繰り返されています。思いは絶えずそこに戻り、苦しみを伴う心の棘のように感じられました。そこで私はここに来て祈る必要を感じました。それは精神的に寄り添うということだけでなく、このようなことが2度と起きないようにと、私たちの意識を呼び覚ますためでもありました。
お願いです。このようなことが繰り返されてはなりません!
しかし初めに、よりよい何かを求めて旅の身にある人びとへの関心を忘れないランペドゥーサとリノーサの住民の皆さん、様々な団体やボランティア、公安関係者に心からの感謝と励ましを送りたいと思います。皆さんは小さくても、連帯の模範を与える存在です。

今日、ここにいる親愛なるイスラム教徒の移民の皆さんに挨拶を送りたいと思います。今晩からラマダンの断食に入る皆さんに豊かな精神的恵みがありますように。教会は皆さんと皆さんの家族のためのより尊厳ある生活の追及に寄り添うものです。……』

7月下旬にブラジルで開催される世界青年大会に参加される教皇様が特別機ではなく一般の飛行機で普通の客として行きたいと希望し、イタリア・ブラジル両国政府が護衛上の理由で反対し苦慮しているという話も枢機卿時代公共交通機関を利用していた今の教皇様なら不思議ではありません。今後も新教皇様の言動に注目していきたいものです。

主任司祭 松尾 貢
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