「よく死にたいのですか、それではよく生きなさい」

アイキャッチ用 種田山頭火

「よく死にたいのですか。それではよく生きなさい」これは種田山頭火という俳人の言葉です。山頭火は、旅と酒と俳句に生きた漂白の俳人と言われています。

彼は誰の心にもある弱さを正直に俳句にした人です。彼の人生は波瀾万丈で幼少期に母親が自殺し、裕福だった家は父親の事業の失敗で没落し、結婚しますが貧しく、そして彼の弟が自殺をします。この弟の死が山頭火を変えたと言われています。

山頭火は、弟の死から、近くのお寺に導かれ、曹洞宗の禅僧になります。そこから本格的に俳句の創作活動を行います。

つまり山頭火は、母親や弟の死をとおして“死とは何か”、“生きるとは何か”といったことを考え、次第に自分なりに悟っていったのではないでしょうか。だからこそ、よき死を迎えるためには、自分に与えられた人生をしっかりと生きなければならないと思い、旅をしながら俳句を書いて、自分の生き方を模索していたように思います。

8月はお盆を迎えます。一般的には亡くなった先祖や家族を思い起こす時です。私たちのほとんどは人の死に対して、若くして可哀想とか、突然逝って残念といった思いを抱きますが、その前に山頭火のように、人の死をとおして、自分の死や人生というものを考え、生きて行かなければならないのではないでしょうか。それは「死」は必ず誰にでも訪れるものだからです。

彼は俳句の世界では変わり者、異端児といわれていますが、むしろ彼の生き方は、誰よりも人生を真剣に考えて生きた人であったと言えるでしょう。だから彼の言葉には深みと説得力があるのではないかと思います。

この山頭火のように、私たちも人生最後のときには、「これで良かった」と思えるよう悔いなく死を迎えたいと願っています。それを本当に願っているのであるならば、どのように人生をよりよく良く生き、全うするかを常に考えて生きなければならないのではないでしょうか。

主任司祭 西本裕二

Photo by WikimediaCommons / PD


おすすめ記事