サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ教会丸天井後陣のモザイク画(ヤコポ・トッリティ作)

11月9日は、ラテラン教会の献堂を記念致します。ラテラン教会とは、ローマのラテランに建てられた教会で、ローマの司教座聖堂です。つまりローマ教皇の聖堂として、“すべての諸教会の母”と呼ばれ、世界のすべての教会を代表するものとして祝います。

諸教会の母といいますと、私は“母なる教会”という呼び名を連想します。それは聖公会の信者の中には、カトリック教会を“母なる教会”と思っている方がけっこういるからです。聖公会は、英国教会とも呼ばれ、国王ヘンリー8世の王妃との離婚問題でローマ教皇と対立して、国王がイギリスの教会の元首となったことがきっかけで袂を分かつことになったことは皆さんもご存じでしょう。

2010年初頭、女性司祭の問題で聖公会からカトリック教会に転会することを希望する聖公会の聖職者、信者が世界各地で増えました。そのときベネディクト16世教皇は、彼らの要望に応えることを目指し、教会憲章『アングリカノールム・チェティブス(聖公会の人たち)』を発表し、またカンタベリー大主教(英国教会の最高指導者)との話し合いの中で教会一致を妨げないために、聖公会からカトリック教会への転会を簡略化するための窓口も設けました。その際、カトリック教会へ転会を希望する聖公会のある信者は、「私たちは“母なるカトリック教会”に戻るだけのことです」と語ったことを、私はとても印象深く覚えています。つまり歴史の過程で袂を分かつことになったものの、今でもカトリック教会とつながっており“母なる教会”またカトリック信者を兄弟、仲間と思って下さっているということはとてもありがたいことです。

私たちカトリックの信者も聖公会だけでなく、プロテスタントの信者に対しても、決して敵のように見るのではなく、教皇も彼らのキリスト者としての洗礼を認めていますので、私たちも懐深く、他宗派のキリスト信者も、みんな兄弟、仲間として、つながりを大事にして、一致を目指して、より関係を深めていかなければならないのではないでしょうか。

主任司祭 西本 裕二


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