聖母子と聖マルティナ[部分](ピエトロ・ダ・コルトーナ画)

今年度、都筑教会の婦人の信徒の方から「マリア様のご像の周辺のお花のために使って下さい」と言って、2度ほど寄付を頂きました。これはマリア様と言えば、そのイメージに「花」があるからではないでしょうか。私がこれまで働いてきたどこの教会でも、マリア像の前に花を置いていく方が時々いました。それはきっとマリア様に対して花を贈り、飾ることで、自分の思いを捧げているのではないでしょうか。

これは教会の一つの伝統と言えるでしょう。実際、ヨーロッパなどでは5月を「花の月、春の月」などと呼んで、マリア様を崇敬して花を捧げる伝統があります。アジアの国々でもマリア様を崇敬して花を捧げる伝統があります。つまり自然の美しさに囲まれ、創造主を思い起こさせることから、美しく清らかなマリア様に春の訪れとともに花々を捧げるということで、聖母月となった一つの理由と考えられます。
聖ヨハネ・ボスコが尊敬していた聖フィリポ・ネリは、5月にマリア様への崇敬を行うように、またマリア様のご像に花を飾り、聖歌を歌うだけでなく、道徳的な行為と愛のわざも行うように青年たちに教えていたと言われます。聖ヨハネ・ボスコ自身、マリア様の祝いの前に子どもたちに「徳の花」に取り組むことを勧めています。
つまり聖人たちの多くはマリア様への捧げ物として、思いのこもった「徳の花」を大事にしていたということです。「徳の花」とは、愛のわざ同様、日々の生活の中でそれぞれが捧げる「小さな良い行い」のことです。

今、四旬節のため聖堂内は花を飾りませんが、教会前のマリア像の周辺に花々があるだけで私たちの心を和ませてくれます。マリア様のシンボルの花はご存じのように「白百合の花」です。純粋で清らかな優しさを持つ凛とした女性の姿を象徴するものです。この純粋さこそがきっと神がマリア様を特別に愛され、選ばれた理由でしょう。私たちもマリア様のような純粋な心をもって、この四旬節、思いのこもった「徳の花」を神に捧げましょう。「徳の花」をもって、神に自分を捧げる人は、マリア様のように神から愛される者となるでしょう。そして、さらに人の心を和ませ、生きる喜びを与える者にもなれるのではないでしょうか。

『聖母マリアへ花を捧げる伝統的な意味』(ヨゼフ・チョン・ディン・ハイ神父)参照

主任司祭 西本裕二


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