アイキャッチ用 田中神父の今週の糧

クリスマスは「平和」の祝日です。
世界史をひも解くと、人類の歴史は、戦争の歴史であるとの感を深くします。しかし多くの戦場で、クリスマスの日だけは、「クリスマス休暇」が「暗黙の了解」で成立したことも伝えられています。クリスマスと戦争は氷炭相容れない関係だからです。なぜなら、クリスマスは平和の祝日だからです。

1943年のスターリングラードの戦場での出来事でした。
来る日も来る日も市街戦が続き、ドイツ軍の兵士たちも疲労困憊していました。クリスマスが近づくと、火の気のない破壊された建物の地下室で、故郷での懐かしいクリスマスの日々を想い出しながら、兵士たちはひざ小僧を抱きかかえ、眠れぬ夜を過ごすのでした。長い戦争の中で兵士たちの心が否応なしに荒れていくのを目の当たりにした一人のプロテスタントの牧師さんは、戦いの合間を利用してひそかに聖母マリア様の絵を描きました。そして幼子イエスをやさしく胸に抱きしめているマリア様の絵にドイツ語で三つの言葉を記しました。Lichet,Leben,Liebe、日本語で「光、いのち、愛」です。クリスマス当日は、その絵を前にして、牧師さんを中心に祈りの集いがもたれ、憎しみが支配する戦場にあって「平和」を願う熱い思いが天に届けられたとのことです。
捕虜収容所で牧師さんは亡くなりましたが、絵は遺品として家族のもとへ送られ、現在はベルリンの聖堂に飾られ「ざんごうのマドンナ」として市民に慕われているとのことです。

「平和」は、光、いのち、愛を育む土壌です。神が人類を信頼して、キリスト様を人類に託したことをお祝いするクリスマスは「光、いのち、愛」の祝日であり、同時に平和の祝日でもあるのです。キリスト教の伝統の強いヨーロッパのある地方では、クリスマス・イヴに、家の玄関の戸を少し開けておく習慣があると聞いています。それは、その年にケンカをしたり、対立して口をきかなくなった人に、自分にも和解の気持ちがありますのでいつでもどうぞお入り下さいとの意思表示をするためです。

平和の祝日、クリスマスを迎えるにあたって、私たちも「和解」のために、心の扉を少し開けたいものです。

主任司祭 田中次生

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