ヨブおじさんと聖ビアンネと新司祭

アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

フランスのジョルジュ・ベルナノスという作家に『田舎司祭の日記』という作品があります。この作品は、司祭年にあたって示された聖ビアンネをモデルにした小説といわれています。

この小説の中で先輩司祭が主人公に語ったことばが印象的です。
「いいかね。神は、わしらが地の蜜であるとは、書かれなかった。きみ、地の塩なんだよ。ところで、わしらのあわれむべき世界は、からだじゅう傷と潰瘍でおおわれた寝藁のうえのヨブじいさんみたいなものさ。赤肌に塩をつければ、しみるにきまっている。でもそれで腐敗は防げるわけだ」
キリスト者はこの世にあって、その傷にしみる存在である。でもそのおかげでこの世の腐敗が防げるのだと先輩司祭は説きます。

聖ビアンネはフランス革命直前の1786年に生まれました。混乱と反宗教的な雰囲気の中で彼の教育も途中で途切れ、必修のラテン語と苦闘しながらやっとのことで司祭になります。1818年、彼は精神的にも荒れ果てた南仏リオン近くのアルス村の主任司祭に任命されます。そこで、41年間、73歳で亡くなるまで司牧にはげんだのでした。神様と人々の和解のために、特に〈ゆるしの秘跡〉を通して村人のために尽くしました。次第に、フランス各地から彼のもとに霊的指導を求めて人々が押しかけてくるようになります。しかし、その勤めの大変さに彼はトラピスト修道院に入ろうと3度も村からの逃走を図りますが、村人から連れ戻されました。自分の置かれた小教区の中で“地の塩”として生きる教区司祭のモデルといわれる所以です。
4月29日に、横浜教区の新司祭宮内毅師が誕生します。師がアルスの司祭のような教区司祭を目指して生涯をまっとう出来ますよう、お祈りをもって支えてまいりましょう。

主任司祭 松尾 貢

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