ご降誕(MASTER of the Munich Marian Panels画)

私はビートルズの音楽を聴いて育った第2世代ですが、時代を感じさせない彼らの歌には少なからず影響を受けました。

このビートルズのメンバーであったジョン・レノンと夫人のオノ・ヨーコが、ベトナム戦争が泥沼化した1969年のクリスマスに平和を願って、世界のいくつかの都市にとても大きな看板を掲げました。そこには『戦争は終わる! あなたが望めば』と書かれてありました。その2年後に「ハッピー・クリスマス」というあの有名なクリスマスソングが作られます。そしてこの歌のサブタイトルとして付けられたのが、看板にあった「戦争は終わった」という言葉です。
ジョン・レノンは平和運動に傾倒し、多くの若者に影響を与えました。彼の歌や活動のメッセージは愛と平和でした。

今年もキリストの誕生を感謝し、祝うクリスマスを迎えます。けれども、私たちの心は、なぜか単純に喜べないものがあります。それはコロナ感染症拡大、ロシアとウクライナの戦争、中国の覇権主義、北朝鮮の核問題など、平和を脅かす様々な出来事が世界に絶え間なく起こり、人びとの生活に不安や恐れを与えているからです。
しかしクリスマスのメッセージは、ジョン・レノンが求めたそれと同じ「愛と平和」です。これは幼子の姿で来られた神の子キリストのうちに象徴されています。無力で何も持たない幼子の姿は、人間として大切なもの、平安、喜び、優しさ、希望といったものが見られます。そしてそれは、愛と平和に生きる人間の姿でもあります。

この世界が愛と平和で満たされるために、私たちは何をしなければならないのか。ジョン・レノンが看板に掲げた「あなたが望めば」というもう一つの言葉にキーワードがあるような気がします。

「望む」ということには、願いが込められています。人間が大事なものを望むとき、それは必然的に祈りになると思います。ですから、私たち一人ひとりが争いや災いではなく、幼子の姿で来られたキリストを強く待ち望むならば、その望みが平和を求める祈りとなって、この世界にまことの平和が訪れ、誰もが心から喜べるクリスマスを迎えることができるのではないでしょうか。

皆さんにとって、今年はいつもと違うハッピー・クリスマスになりますよう……。

主任司祭 西本 裕二


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